「もう一匹猫を迎え入れたい!」そう考える飼い主さんは多いでしょう。しかし、猫は単独行動を好む動物。無計画な多頭飼いは、猫たちにとって大きなストレスになりかねません。先住猫と新入り猫が幸せに暮らすためには、事前の準備と、何よりも「相性」を見極めることが非常に重要です。
この記事では、獣医の監修なしで、一般の飼い主さんの経験と知見に基づいた、猫の多頭飼いを成功させるための実践的なアドバイスをお届けします。相性の見極め方から、スムーズな導入方法、そして多頭飼いならではの課題と対処法まで、具体的なステップで徹底解説していきます。
あなたの愛猫たちが、より豊かで幸せな多頭生活を送れるよう、ぜひ最後までお読みください。
多頭飼いを始める前に:本当に「猫のため」になっているか?
多頭飼いを考えるきっかけは様々ですが、まず最初に自問自答してほしいのは「本当に猫たちにとって良いことなのか?」という点です。「飼い主が寂しいから」「可愛いから」という理由だけで決めてしまうのは危険です。猫は人間とは違う動物であることを理解し、猫の目線で多頭飼いのメリット・デメリットを冷静に考えることから始めましょう。

多頭飼いのメリット
- 遊び相手ができる:特に留守番が多い猫にとって、遊び相手がいることで退屈が紛れます。
- 運動不足解消:猫同士で追いかけっこをしたりすることで、自然と運動量が増えます。
- 精神的な安定:お互いに寄り添って寝るなど、精神的な支えになることがあります。
- 飼い主の喜び:複数の猫に囲まれる生活は、飼い主にとっても大きな喜びです。
多頭飼いのデメリット・注意点
- ストレス:相性が悪いと、先住猫・新入り猫双方に大きなストレスがかかります。
- 縄張り争い:猫は縄張り意識が強いため、喧嘩やマーキングの原因になることがあります。
- 病気の伝染:どちらかの猫が病気になった際、もう一匹に伝染するリスクが高まります。
- 経済的負担増:食費、医療費、トイレ砂など、全てが2倍以上にかかります。
- 世話の手間増:多頭飼い専用の工夫(トイレの数、ご飯の場所など)が必要です。
これらのメリット・デメリットを十分に考慮し、ご自身のライフスタイルや経済状況、そして何よりも先住猫の性格をよく理解した上で、多頭飼いを検討してください。
多頭飼い成功の鍵!先住猫の性格を見極める
多頭飼いを成功させる上で最も重要なのは、先住猫の性格を正しく理解することです。新入り猫の性格ももちろん大切ですが、まずは家にいる猫が新しい家族を受け入れられるタイプかどうかを見極めましょう。
多頭飼いに向いている先住猫のタイプ
- 友好的で好奇心旺盛:人や来客、他の動物(窓の外の鳥など)に対して興味を示し、あまり警戒心がない猫。
- 遊び好きで活発:遊びを通じてコミュニケーションを取ることに慣れており、退屈している様子が見られる猫。
- ストレス耐性が高い:環境の変化やちょっとしたことでパニックになったり、体調を崩したりしない猫。
- 子猫を世話する経験がある(野良猫時代など):もしあれば、他の猫との関わりに慣れている可能性があります。
多頭飼いに慎重になるべき先住猫のタイプ
- 極度の怖がり、神経質:来客時など、見慣れないものに強いストレスを感じ、隠れてしまう猫。
- 攻撃的、独占欲が強い:おもちゃやご飯、飼い主を独占しようとし、唸ったり威嚇したりする猫。
- 高齢猫、病気を抱えている猫:新しい刺激や環境の変化が大きな負担になる可能性があります。
- 一人遊びが苦手で飼い主にべったり:飼い主の愛情を独り占めしたいタイプで、ジェラシーを感じやすいかもしれません。
「うちの猫はどっちだろう?」と迷ったら、慎重になる方が賢明です。無理強いはせず、先住猫のペースを第一に考えましょう。
新入り猫選び:先住猫との相性を考慮した選び方
先住猫の性格を把握したら、次はいよいよ新入り猫選びです。先住猫との相性を最優先に考え、慎重に選びましょう。

相性を高める新入り猫のポイント
- 年齢:子猫が最もおすすめ
- 子猫は順応性が高く、警戒心が少ないため、先住猫が受け入れやすい傾向にあります。
- 先住猫が成猫の場合、子猫を「子供」と認識し、攻撃的になりにくいと言われています。
- 性別:組み合わせは様々だが、去勢・避妊は必須
- 一般的に、オス同士、メス同士より、オスとメスの組み合わせの方が比較的スムーズな場合が多いと言われます。
- しかし、個体差が大きいため、最も重要なのは性格です。
- どの組み合わせでも、発情期によるストレスや喧嘩を防ぐため、必ず去勢・避妊手術を済ませましょう。
- 性格:穏やかで控えめな子が理想
- 先住猫が活発なら、同じくらい活発な子が合う場合もあれば、逆に穏やかな子が先住猫のペースを乱さず良い場合もあります。
- 基本的には、自己主張が強すぎず、控えめな性格の子の方が、先住猫への配慮ができるため衝突しにくいでしょう。
- 保護施設などで一時預かりされている子猫なら、その子の性格を事前に聞くことができます。
- 体格・体力:あまり差がない方が良い
- 極端な体格差や体力差があると、遊びや喧嘩で怪我をするリスクが高まります。
- 特に、成猫と子猫の場合、子猫が遊びで先住猫に怪我をさせたり、逆に先住猫が加減を誤って子猫に怪我をさせたりする可能性もあります。
これらのポイントを参考に、保護団体や信頼できるブリーダーから情報を得るのが良いでしょう。可能であれば、一時預かりの形で相性を見る期間を設けることも有効です。
失敗しない導入ステップ:慎重な対面が成功を呼ぶ
新しい猫を迎え入れたら、すぐに先住猫と対面させるのは絶対NGです。焦らず、段階を踏んでゆっくりと関係を築かせることが何よりも重要です。以下に具体的なステップを紹介します。
ステップ1:新入り猫の隔離(2~3日~1週間程度)
新入り猫を家に連れてきたら、まず先住猫とは完全に隔離された部屋(ゲストルーム、予備の部屋など)を用意し、そこで過ごさせます。
- 目的:
- 新入り猫が新しい環境に慣れるため。
- 先住猫に、見慣れない猫の存在を匂いで知らせるため。
- ウイルスチェックや健康状態の確認のため。
- 準備物:
- 新入り猫専用のトイレ、水入れ、ご飯入れ、ベッド、おもちゃ。
- 先住猫が入れないように、しっかりとドアを閉められる部屋。
- ポイント:
- この期間、飼い主は両方の猫と平等に接し、愛情を注ぎましょう。
- 特に先住猫には「あなたが一番」というメッセージを伝えることが大切です。
ステップ2:匂いの交換(毎日)
隔離期間中から、お互いの匂いを交換し、相手の存在に慣れさせます。
- 方法:
- 両方の猫を撫でた手で、もう一方の猫を撫でる。
- それぞれの猫の寝床のタオルや毛布を交換し、お互いの匂いを嗅がせる。
- 新入り猫が落ち着いてきたら、その部屋で使っていたタオルを先住猫のいるリビングに置いてみる。
- ポイント:
- 猫が匂いを嗅いでいる時に、嫌がるそぶりを見せたらすぐにやめる。
- 褒めながら匂いを嗅がせることで、良い印象を与えるように心がける。
ステップ3:ガラス越し・ケージ越しの対面(数日~1週間)
匂いに慣れてきたら、直接触れ合わせずに、お互いの姿が見える状態を作ります。
- 方法:
- 新入り猫をキャリーケースやケージに入れ、先住猫のいる部屋に短時間置く。
- または、ドアを少し開けて、隙間からお互いを覗かせたり、網戸越しに対面させたりする。
- ポイント:
- 最初はごく短時間(数分)から始め、様子を見ながら徐々に時間を延ばす。
- 威嚇、唸り声、シャー、毛を逆立てるなどの攻撃的なサインが見られたら、すぐに中止し、一旦隔離に戻す。
- 猫たちが落ち着いていたら、おやつを与えたり、遊んであげたりして、「相手がいると良いことがある」と学習させる。
- この時、先住猫を優先し、新入り猫を刺激しないように注意する。
ステップ4:直接対面(数日~数週間)
ケージ越しでも落ち着いていられるようになったら、いよいよ直接対面です。
- 方法:
- 最初は飼い主が見守る中で、短時間だけ同じ部屋で過ごさせる。
- おやつやおもちゃを使って、良い雰囲気を作る。
- 各猫に逃げ場(隠れられる場所)を用意しておく。
- ポイント:
- 対面中も攻撃的なサインが見られたら、すぐに引き離し、隔離に戻す。焦りは禁物。
- 喧嘩になりそうになったら、大きな音を立てて注意を逸らすなど、直接手を出さずに介入する。
- 決して無理強いせず、猫たちのペースに合わせる。数日で仲良くなることもあれば、数週間、数ヶ月かかることもあります。
ステップ5:共同生活への移行
直接対面で問題なく過ごせるようになったら、少しずつ一緒にいる時間を長くしていき、共同生活へと移行します。
- ポイント:
- 最初は夜間など、飼い主が目を離す時間はまだ別々に寝かせる方が安心です。
- 完全に同居させるのは、猫たちが寄り添って寝たり、毛づくろいしあったりするようになったらで十分です。
- この段階でも、もし関係が悪化するようであれば、ステップを戻してやり直す勇気も必要です。
多頭飼いならではの課題と解決策
無事に多頭飼いを始めても、いくつか注意すべき課題があります。これらを事前に把握し、対策しておくことで、より快適な共生生活を送ることができます。

課題1:ご飯の場所・食べ方
猫によっては、ご飯を独り占めしようとしたり、相手のご飯を食べたりすることがあります。また、ゆっくり食べたい猫がストレスを感じることも。
- 解決策:
- ご飯の場所を複数用意する:別の部屋や、高さの違う場所にそれぞれのご飯を置く。
- 食器を分ける:それぞれの猫専用の食器を用意し、他の猫が食べないように注意する。
- 早食い防止:早食いする猫には、早食い防止用の食器を使う、一度に与える量を減らすなどの工夫をする。
- 見守りながら与える:最初はお互いの食べる様子を見ながら、必要であれば間に壁を作るなどして調整する。
課題2:トイレの設置と管理
猫は排泄に非常にデリケートな動物です。トイレ環境が悪いと、不適切な場所での排泄(粗相)につながることがあります。
- 解決策:
- トイレは「猫の数+1個」が基本:最低でも猫の数より1つ多く設置しましょう。
- 設置場所を複数に:リビング、寝室、廊下など、家の様々な場所に分散して置く。
- トイレの種類を検討:オープンタイプ、ドームタイプ、システムトイレなど、猫の好みは様々です。いくつか試して、お気に入りのものを見つけましょう。
- 清潔に保つ:毎日複数回掃除し、常に清潔な状態を保つことが非常に重要です。
課題3:遊びと運動
猫同士で遊ぶこともありますが、全ての猫が活発に遊ぶわけではありません。また、特定の猫だけが遊びのターゲットになることもあります。
- 解決策:
- 個別の遊び時間を作る:それぞれの猫と、1対1で遊ぶ時間も大切にしましょう。
- 複数のおもちゃを用意:猫それぞれに好きなおもちゃを用意し、奪い合いにならないようにする。
- キャットタワーや隠れ家:高い場所や隠れられる場所を複数用意し、それぞれの猫が安心できる居場所を確保する。
- 知育玩具の活用:一人遊びができるおもちゃや、頭を使う知育玩具も取り入れる。
課題4:先住猫への配慮と愛情表現
新入り猫にばかり気を取られ、先住猫への愛情が薄れてしまうと、先住猫がストレスを感じ、関係が悪化する原因になります。
- 解決策:
- 「先住猫ファースト」を意識する:ご飯は先住猫から、撫でるのも先住猫から、などのルールを作る。
- 個別のスキンシップ:新入り猫がいないところで、先住猫とゆっくり過ごす時間を作る。
- 安心できる場所:先住猫専用の、他の猫が入ってこない隠れ家や高所を用意する。
多頭飼いは飼い主の「根気」と「愛情」が試される

猫の多頭飼いは、確かに喜びも多いですが、飼い主にはそれなりの準備と覚悟が求められます。猫同士の相性は人間がコントロールできるものではありません。どんなに準備をしても、うまくいかないこともあります。
しかし、焦らず、猫たちのペースに合わせて気長に見守り、困った時には適切な対策を講じることで、多くの猫たちが幸せな多頭生活を送っています。
もし途中でうまくいかなくなっても、諦めずに情報収集をしたり、必要であれば専門家のアドバイスを求めることも考えてみてください。何よりも、猫たちそれぞれに愛情を注ぎ、それぞれの個性を尊重することが、多頭飼い成功への一番の近道となるでしょう。
この記事が、あなたの愛猫たちがより幸せな共生生活を送るためのヒントになれば幸いです。

