猫の膀胱炎:症状・原因・予防と再発防止策まで

猫の膀胱炎 猫の健康・病気

愛らしい猫が、突然トイレで苦しそうにしていたり、普段と違う場所でおしっこをしてしまったりしたら、飼い主としては心配になることでしょう。そのような症状が見られた場合、「膀胱炎」の可能性があります。

猫の膀胱炎は、比較的よく見られる病気ですが、放置すると重症化したり、何度も再発を繰り返したりすることがあります。特にオス猫の場合は、尿道閉塞という命に関わる危険な状態に陥るリスクもあるため、早期に気づき、適切に対処することが非常に重要です。

この記事では、猫の膀胱炎の具体的な症状、様々な原因、自宅でできる予防策、そして再発防止のためのヒント、さらには動物病院での治療法や受診の目安までを詳しく解説します。大切な愛猫の泌尿器系の健康を守り、快適な毎日を過ごさせてあげるために、ぜひこの記事を参考に、膀胱炎に関する正しい知識を身につけておきましょう。

猫の膀胱炎とは?知っておくべき症状

膀胱炎とは、膀胱に炎症が起こる病気の総称です。猫の膀胱炎は様々な原因で起こりますが、その多くは「猫下部尿路疾患(FLUTD)」という、膀胱から尿道にかけての病気のグループの一つとして考えられます。

膀胱炎の主な症状

以下のような症状が見られたら、膀胱炎のサインかもしれません。注意深く観察しましょう。

  • 頻尿、残尿感: 何度もトイレに行く、少量ずつ何度も排尿する、排尿の姿勢を長く取る、しかし尿量は少ない。
  • 排尿時の痛み: 排尿中に鳴く、トイレでいきむ、苦しそうな声を出す。
  • 血尿: おしっこの色がピンク色や赤色になっている、あるいはわずかに血が混じっている。
  • 粗相(不適切な排泄): トイレ以外の場所(カーペット、ソファ、床など)でおしっこをしてしまう。
  • トイレにいる時間が長い: 排尿姿勢を取ったままなかなか終わらない。
  • 生殖器を気にする: おしりをしきりになめる、気にして触る。
  • 元気がない、食欲不振: 症状がひどくなると、全身的な不調が見られることもあります。

特に注意すべき緊急性の高い症状(オス猫に多い)

以下の症状が見られた場合は、「尿道閉塞」の可能性があり、非常に緊急性の高い状態です。一刻も早く動物病院を受診してください。オス猫の尿道は細く、詰まりやすいため特に注意が必要です。

  • 全くおしっこが出ない: トイレに何度も行くのに、おしっこが全く出ていない。
  • 嘔吐を伴う: 尿毒症の症状として嘔吐が見られることがあります。
  • ぐったりしている、元気がない: 痛みや体調不良でぐったりしている。
  • お腹を触ると痛がる、張っている: 膀胱がパンパンに張って苦しがっている。

尿道閉塞は、腎臓に大きな負担をかけ、数時間で命に関わる危険な状態になることがあります。これらのサインを見逃さないでください。

猫の膀胱炎:様々な原因

猫の膀胱炎の原因は多岐にわたりますが、主に以下のカテゴリーに分けられます。

1. 特発性膀胱炎(ストレス性膀胱炎)

最も多く見られる膀胱炎の原因で、明確な細菌感染や尿石、腫瘍などの異常が見つからない場合に診断されます。ストレスが大きな要因と考えられています。

  • ストレス要因:
    • 環境の変化(引越し、来客、新しい家具、工事など)
    • 生活リズムの変化(飼い主の不在時間増加、食事時間の変更など)
    • 他の猫との関係(多頭飼育での不仲、縄張り争いなど)
    • 騒音、新しいペット、過剰な構いすぎ、構わなすぎ
    • トイレの清潔さ、場所、砂の種類への不満
  • 特徴: ストレスが軽減されると症状が落ち着くことが多いですが、再発しやすい傾向があります。

2. 尿石症(尿石による膀胱炎)

膀胱や尿道に結石や結晶が形成され、それが刺激となって炎症を起こしたり、尿道を塞いだりすることがあります。猫でよく見られるのは「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」です。

  • ストルバイト結石: 尿がアルカリ性に傾くとできやすい結石です。食事管理で溶ける可能性があります。
  • シュウ酸カルシウム結石: 尿が酸性に傾くとできやすい結石です。食事では溶けにくく、外科手術が必要になることが多いです。
  • 原因: 食事内容(ミネラルバランス)、飲水量の不足、遺伝などが関係します。

3. 細菌感染

細菌が膀胱に侵入し、炎症を引き起こすことがあります。猫の膀胱炎の中では比較的少ない原因とされますが、特に高齢の猫や、糖尿病などの持病を持つ猫では注意が必要です。

4. その他

  • 尿道栓: 炎症によって剥がれた細胞、粘液、結晶などが混ざり合ってゼリー状の塊になり、尿道を詰まらせることがあります。オス猫に多いです。
  • 腫瘍: 膀胱内に腫瘍ができることで、膀胱炎に似た症状や血尿が見られることがあります。
  • 構造上の異常: 先天的に泌尿器系の構造に異常がある場合。
  • 外傷: 交通事故などで膀胱に損傷がある場合。

家庭でできる膀胱炎の予防と再発防止策

猫の膀胱炎、特に特発性膀胱炎はストレスが大きく関わると言われています。日頃からのケアで、膀胱炎のリスクを下げ、再発を防ぐことが可能です。

1. 水分摂取量を増やす

尿量を増やし、膀胱内の老廃物や細菌、結晶などを排出しやすくすることが、膀胱炎予防の基本です。

  • 新鮮な水を常に用意: 複数箇所に水飲み場を設置し、毎日水を交換しましょう。
  • 水飲み器の種類を見直す: 流れる水を好む猫もいるので、循環式の給水器(ファウンテン)を試してみるのも良いでしょう。
  • ウェットフードを活用: ドライフード中心からウェットフードに切り替えたり、ウェットフードを混ぜて与えたりすることで、食事から水分を摂取させることができます。
  • フードをふやかす: ドライフードにお湯や猫用ミルク(乳糖不耐症に配慮したもの)を少量加えてふやかすのも有効です。
  • 水に風味をつける: 茹でた鶏肉の茹で汁(塩分なし)や、猫用カツオ出汁などを少量加えて、水に風味をつけると飲水量が増えることがあります。

2. ストレスを軽減する環境作り

特発性膀胱炎の予防には、猫のストレスを最小限に抑えることが非常に重要です。

  • 安心できる場所の提供: 猫が一人で静かに過ごせる隠れ家や高い場所(キャットタワーなど)を用意しましょう。
  • 遊びの時間の確保: ストレス解消と適度な運動のために、猫じゃらしなどを使って毎日適切な遊びの時間を設けましょう。
  • 環境の変化を最小限に: 家具の配置を頻繁に変えたり、大きな音を立てたりするのを避けましょう。
  • 多頭飼育の場合: 各猫が自分のスペースを確保できるよう、食事場所や水飲み場、トイレなどを分散して設置しましょう。猫同士の相性にも配慮が必要です。
  • フェロモン製剤の活用: ストレスを和らげる効果があるとされるフェロモン製剤(プラグインタイプやスプレータイプ)を使用するのも一つの方法です。

3. トイレ環境の改善

トイレに関するストレスは、膀胱炎の大きな引き金となります。

  • トイレの清潔維持: 排尿・排便ごとに汚れた部分を取り除き、週に1回は全ての砂を交換してトイレを洗浄しましょう。
  • トイレの数と場所: 多頭飼育の場合は「猫の頭数+1個」が理想です。人通りの少ない、静かで落ち着ける場所に設置しましょう。
  • トイレのタイプ、砂の種類: 猫が安心して使える、十分な大きさのトイレを選び、好みの砂の種類を見つけてあげましょう。屋根付き、屋根なし、システムトイレなど、色々なタイプを試すのも良いでしょう。

4. 食事管理

獣医師と相談し、適切な食事を与えましょう。

  • 尿pHのコントロール: 尿石症の場合、結石の種類に応じたミネラルバランスの療法食が処方されます。獣医師の指示に従いましょう。
  • 肥満防止: 肥満は万病の元であり、膀胱炎のリスクも高めます。適正体重を維持するための食事量管理を行いましょう。

5. 排尿を促す機会を作る

外出する猫の場合は、トイレを我慢する時間を減らすため、定時に外に出すなど排尿の機会を確保することも重要です。

動物病院での膀胱炎の治療法

膀胱炎が疑われる場合、動物病院では様々な検査を行い、正確な診断を下します。

主な診断方法

  • 尿検査: 尿中の細胞、結晶、細菌、血液などの有無を確認し、尿のpHも測定します。膀胱炎診断に最も重要な検査です。
  • 超音波(エコー)検査: 膀胱壁の厚さ、結石や腫瘍の有無、腎臓の状態などを確認します。
  • レントゲン検査: 尿石(特にシュウ酸カルシウム結石)の有無を確認します。
  • 血液検査: 全身の状態や腎機能などを確認します。

主な治療法

治療は、膀胱炎の原因によって異なります。

  • 特発性膀胱炎の場合:
    • 抗炎症剤、鎮痛剤: 炎症を抑え、痛みを和らげます。
    • 抗不安薬: ストレスが原因の場合に処方されることがあります。
    • 膀胱保護剤: 膀胱粘膜を保護する成分を含む薬が処方されることもあります。
    • 環境改善: ストレス要因を取り除くための環境改善指導が重要です。
  • 尿石症の場合:
    • 療法食: 結石の種類に応じた療法食(ストルバイト結石を溶かす、シュウ酸カルシウム結石の形成を抑えるなど)を与えます。
    • 外科手術: 食事療法で溶けない結石や、尿道閉塞を起こしている結石は、外科手術で除去が必要になることがあります。
  • 細菌性膀胱炎の場合:
    • 抗生物質: 細菌感染を抑えるために抗生物質が処方されます。尿検査で原因菌を特定し、その菌に効果のある抗生物質を選ぶことが重要です。
  • 尿道閉塞の場合(緊急処置):
    • 尿道カテーテル挿入: 詰まった尿道にカテーテルを挿入し、閉塞を解除します。
    • 点滴: 脱水症状や尿毒症の治療のために行われます。
    • 手術: カテーテルでも解除できない場合や、閉塞を繰り返す場合は、尿道造瘻術などの手術が検討されることもあります。

獣医師の指示に従い、処方された薬を正しく、最後まで使用することが完治への近道です。

まとめ:早期発見と継続的なケアが大切

猫の膀胱炎は、愛猫のQOLを著しく低下させ、特にオス猫では命に関わる緊急事態に発展する可能性もある病気です。しかし、原因を理解し、日頃から適切な予防とケアを行うことで、発症リスクを下げ、再発を防ぐことができます。

  • 排尿の様子を毎日チェック: 頻度、量、色、排尿時の様子など。
  • 水分摂取を促す工夫: 常に新鮮な水、ウェットフードの活用など。
  • ストレス軽減と快適な環境作り: 安心できる場所、遊びの時間、清潔なトイレなど。
  • 異変に気づいたらすぐに病院へ: 特に、おしっこが出ていない場合は緊急事態です。

膀胱炎は再発しやすい病気でもありますので、一度発症した猫は、完治後も継続的なケアが重要です。愛猫の健康を守るために、私たち飼い主が正しい知識を持ち、日々の生活の中で愛情を持ってサポートしてあげましょう。