【神話の猫、伝説の猫】世界中の不思議な猫の物語を巡る旅
しなやかな体つき、気まぐれな瞳、そして時に見せる甘えん坊な姿…猫は古くから人々の心を捉え、私たちの文化の中に深く根付いてきました。その歴史の中で、猫たちは単なる愛玩動物としてだけでなく、時には神聖な存在、時には不吉な象徴として、様々な「ことわざ」や「迷信」、そして「言い伝え」を生み出してきました。
「猫を飼うと縁起がいい」という話もあれば、「猫は不吉な動物だ」という真逆の言い伝えも存在します。一体なぜ、これほどまでに相反するイメージが猫にはあるのでしょうか?
この記事では、日本だけでなく世界各地に伝わる猫にまつわる興味深いうわさや歴史的背景を紐解きながら、その真意を探っていきます。あなたの知らない猫の魅力や、人間と猫の不思議な関係性が見えてくるかもしれません。さあ、猫が織りなす神秘の世界へ足を踏み入れてみましょう。
日本では「招き猫」に代表される幸運の象徴
日本では、猫は古くから「福を招く縁起の良い動物」として親しまれてきました。特に有名なのが「招き猫」ですね。

「招き猫」のルーツと意味
右手を挙げている招き猫は金運を、左手を挙げている招き猫は人や客を招くとされています。その起源には諸説ありますが、代表的なものをご紹介しましょう。
- 豪徳寺説:江戸時代、江戸の豪徳寺(当時の貧乏寺)の前を通りかかった彦根藩主・井伊直孝が、寺の飼い猫が手招きしているように見えて立ち寄ったところ、雷雨を避けられ、その後に和尚と歓談して大変喜んだという伝説。井伊家は後にこの寺を厚遇し、豪徳寺は隆盛を極めました。この猫は「招福猫児(まねぎねこ)」と呼ばれ、寺の守り猫として祀られるようになりました。
- 自性院説:江戸時代、今戸焼の職人の家に住み着いた猫が、生活に困窮した主人を助けるために、夢枕に立って「自分の姿を焼き物にして売れ」と告げたという伝説。その焼き物が評判となり、主人は貧乏から抜け出せました。
- 遊郭説:吉原の遊女が猫を可愛がっていたところ、その猫が鼠を捕まえ、遊女の身を守ったことから、猫が縁起物として広まったという説もあります。
いずれの説も、猫が「人々に幸運や富をもたらす」というイメージに繋がっています。現代でも、お店の入り口や家の玄関に招き猫を置いている家は多く見られます。
その他の日本のことわざ・迷信
日本には、招き猫以外にも猫にまつわる様々なことわざや迷信があります。
- 猫に小判:猫に小判を与えても価値が分からないように、価値の分からない者に高価なものや貴重なものを与えても無駄であることの例え。
- 猫の額:土地などが非常に狭いことの例え。
- 猫の手も借りたい:非常に忙しい時に、どんなに役立たないものでも手伝ってほしいと思うほど忙しいことの例え。
- 猫をかぶる:本性を隠して、おとなしく優しいふりをすること。
- 猫舌:熱いものを苦手とすること。
- 猫ばば:知らぬ顔で自分の物にしてしまうこと。
- 猫が顔を洗うと雨が降る:猫が顔を洗う仕草は、湿気を感知してひげを整えているためという説があり、湿気が多いと雨が降りやすいという経験則から生まれた迷信。
- 猫は七生報いる:猫は可愛がってくれた恩を七代にわたって報いるという言い伝え。
- 三毛猫は船に乗せると縁起が良い:三毛猫(特にオス)は珍しく、船に魔除けとして乗せると無事に航海できるとされた。
世界中で愛される猫、しかし「不吉」な側面も?
一方で、猫は世界中で「不吉」な動物として扱われることもありました。特にヨーロッパでは、中世において魔女狩りの対象となるなど、暗い歴史も持ちます。

魔女の使いとしての黒猫
ヨーロッパでは、特に黒猫が魔女の使いとして恐れられました。
- 魔女との結びつき:中世ヨーロッパでは、黒猫は魔女が集会に行く際に変身する姿、または魔女の使い魔として信仰されていました。夜の闇に溶け込む黒い姿や、暗闇で光る目、気まぐれな行動が、神秘的で不気味だと感じられたのかもしれません。
- 不吉の象徴:黒猫が前を横切ると不運が訪れる、といった迷信が広く信じられていました。これは、闇や悪魔と結びつけられた結果と言えます。
- 大量虐殺:魔女狩りの時代には、魔女とみなされた人々とともに、多くの黒猫が虐殺されました。このことが、かえってネズミの大量発生を招き、ペスト(黒死病)の蔓延の一因になったとも言われています。
しかし、現代では黒猫は幸運の象徴とされる国も多く、例えばイギリスでは「黒猫が家に来ると幸運が訪れる」と言われるなど、イメージは大きく変化しています。
その他の不吉とされる迷信
- 死体の上に猫が飛び乗ると蘇る:中国や一部の地域に伝わる迷信で、猫の持つ神秘的な力、特に邪悪な力と結びつけられたものです。
- 猫を殺すと祟られる:猫は霊的な存在とされ、殺すと報いを受けるという迷信。これは、動物愛護の精神にも通じるものがあります。
猫にまつわる世界のユニークな言い伝え
国や地域によって、猫に対する考え方や言い伝えは様々です。その多様性が、猫という動物の奥深さを物語っています。

幸運を呼ぶ猫の言い伝え
- イギリス:黒猫は幸運のシンボル。特に結婚式の贈り物として贈られると良いとされています。
- ロシア:猫が新しい家に最初に入ると、その家に幸運が訪れると言われています。
- エジプト:古くから猫は神聖な動物として崇拝されており、殺すことは厳しく禁じられていました。猫は豊穣の女神バステトと結びつけられ、守護神として大切にされていました。
- ノルウェー:ノルウェーの森の猫は、北欧神話の豊穣の女神フレイヤの戦車を引く存在として描かれ、幸運の象徴とされています。
- 船乗りと猫:多くの国の船乗りたちは、船に猫を乗せるとネズミを駆除してくれるだけでなく、嵐から守ってくれると信じていました。特に三毛猫のオスは珍重されました。
天気に関する言い伝え
- 猫が顔を洗うと雨が降る:日本だけでなく、多くの国で信じられている天気に関する迷信です。
- 猫がくしゃみをすると雨が降る(イギリス):猫の生理現象が天気と結びつけられています。
- 猫が背中を丸めて座ると嵐が来る(イギリス):気圧の変化を敏感に感じ取るためと考えられています。
健康・病気に関する言い伝え
- 猫は病を治す力がある(ロシア):猫が人の病気の部分に乗ると、その病気が治るという迷信。猫の持つ温かさや癒し効果から生まれたのかもしれません。
- 猫の喉を鳴らす音は骨折を治す(フランス):猫のゴロゴロ音の周波数には、骨の修復を促す効果があるという現代の研究結果もあり、昔からそのような感覚があったのかもしれません。
- 猫の寿命は9つある(欧米):猫のしなやかな動きや、高いところから落ちても怪我をしないなど、生命力の強さから生まれた言い伝えです。
その他の興味深いいい伝え
- 猫にヒゲを切られると金運が下がる(日本):猫のヒゲは感覚器として非常に重要であり、猫にとって大切なものを奪う行為が、結果的に災いを招くという考えから来たのかもしれません。
- 犬と猫が一緒にいると不仲になる(欧米):英語で「fight like cat and dog(犬猿の仲)」ということわざがあるように、犬と猫は相性が悪いというイメージ。しかし実際には仲良く暮らす犬猫も多くいます。
なぜこれほど多様な猫のイメージが生まれたのか?

猫は、その独特な生態や行動から、人々に様々な想像力を掻き立ててきました。なぜこれほどまでに、良いイメージと悪いイメージが混在するようになったのでしょうか?
- 夜行性であること:夜に活動する姿が、神秘的で、時に不気味に映りました。暗闇で光る目も、人々に畏怖の念を抱かせたことでしょう。
- 気まぐれで独立心が強いこと:犬のように従順ではないため、人間のコントロール下に置きにくい動物でした。その自由奔放さが、人々に「何を考えているか分からない」という神秘性を与えました。
- 優れた身体能力:高いところから飛び降りたり、狭い場所をすり抜けたりする能力は、人間にはない超常的な力と結びつけられました。
- 獲物を捕らえる本能:ネズミなどの害獣を駆除してくれることから、人間に恩恵をもたらす存在として感謝されました。一方で、鳥などを捕らえる姿は、一部の人々に残酷な印象を与えたかもしれません。
これらの特性が、人々の生活や文化、信仰と結びつき、地域や時代によって異なる猫のイメージや言い伝えが形成されていったのです。
まとめ:猫が教えてくれる、豊かな文化の世界

今回は、猫にまつわることわざや迷信の世界を旅してきました。改めてポイントをまとめると以下のようになります。
- 日本では「招き猫」に代表されるように、猫は幸運や商売繁盛の象徴として親しまれてきた。
- 「猫に小判」「猫の額」など、猫の行動から生まれたユニークなことわざも多い。
- 一方で、中世ヨーロッパでは黒猫が魔女の使いとされ、不吉の象徴として恐れられた時代もあった。
- 世界各地には、猫が幸運をもたらす、天気を予測する、病気を治すといった多種多様な言い伝えが存在する。
- 猫の夜行性、気まぐれさ、優れた身体能力などが、人々に様々な想像力を掻き立て、多様なイメージが生まれた要因となっている。
猫は、私たち人間にとって、単なるペット以上の存在であることが、これらの言い伝えからよく分かります。時には畏怖され、時には崇拝され、そして常に私たちの傍らで、静かに、しかし確かに歴史を彩ってきました。
現代において、ほとんどの迷信は科学的根拠がないとされていますが、それらは猫と人間が共に生きてきた証であり、豊かな文化の一端を教えてくれます。あなたの愛猫も、もしかしたら古の人々が見た「神秘の猫」の系譜を継ぐ存在かもしれませんね。
この記事を通じて、愛猫への理解が深まり、彼らが持つ古からの魅力を再認識していただければ幸いです。

