「お手!」と言えば、サッと前足を出す。
そんな賢い姿は犬だけのものだと思っていませんか?
「猫は気まぐれだし、言うことを聞かないから無理」と諦めている飼い主さんも多いですが、実は猫はとても賢く、学習能力の高い動物です。サーカスに出演する猫ちゃんがいるように、正しい手順とモチベーションさえあれば、猫もいろいろな芸(トリック)を覚えることができるのです。
芸を教えることは、単なる見世物にするためではありません。
飼い主さんとコミュニケーションを取る楽しさを覚えたり、室内飼いの猫にとって良い刺激(脳トレ)になったりと、たくさんのメリットがあります。
この記事では、初心者でも始めやすい「お座り」「お手」から、ちょっと自慢できる「ハイタッチ」までの教え方を、ステップごとに詳しく解説します。愛猫との新しい遊びとして、ぜひ挑戦してみてください。
1. 始める前に知っておきたい!猫への教え方3つの鉄則
犬と猫では、トレーニングに対するモチベーションが大きく異なります。
犬は「飼い主さんに褒められること」自体をご褒美と感じやすいですが、猫はもう少しドライで実利的です。
まずは猫に芸を教えるための基本ルールを押さえておきましょう。
① 「ご褒美(おやつ)」が9割
猫を動かす最強のツール、それは「美味しいおやつ」です。
「これをすれば美味しいものがもらえる!」というメリットがないと、猫は動きません。普段のドライフードではなく、とっておきのトリーツや、ペースト状のおやつ、一口サイズのささみなど、猫が目の色を変えるものを用意してください。
② トレーニングは「空腹時」に行う
お腹がいっぱいの状態で「お座り」と言われても、猫は「今はいいや…」と寝てしまいます。
ご飯の前や、小腹が空いて活発に動いている時間がベストタイミングです。おやつへの執着心が、学習スピードを加速させます。
③ 1回「3分」以内で切り上げる
猫の集中力は非常に短いです。
しつこくやり続けると、「もう嫌だ!」とトレーニング自体を嫌いになってしまいます。「もう少しやりたいな」と思うくらいでスパッと終わらせるのが、長続きの秘訣です。
2. レベル1:基本の「お座り(シット)」の教え方
「お座り」は全ての芸の基本姿勢になります。
猫の体の構造上、比較的教えやすい動作です。手を使って自然な動きを誘導しましょう。
STEP 1:おやつの匂いを嗅がせて注目させる
猫の目の前におやつを持った手を出し、匂いを嗅がせて注目させます。
(※まだおやつはあげません)
STEP 2:おやつを頭上後方へゆっくり動かす
猫が匂いを嗅ごうとしている状態で、おやつを持った手を、猫の鼻先から頭の上を通って背中の方へ(やや後方へ)ゆっくり移動させます。
すると、猫は顔を上げておやつを目で追おうとします。顔が上がると、バランスを取るために自然と腰(お尻)が下がります。
STEP 3:お尻がついた瞬間に「褒めて」あげる
腰が下がり、床にお尻がペタンとついた瞬間に、「よし!」「いいこ!」と短く声をかけ、すぐにおやつを与えます。
STEP 4:言葉(コマンド)を足す
おやつによる誘導でお尻を下ろすことに慣れてきたら、動作に合わせて「お座り」と声をかけます。
「お座り」の声 → お尻がつく → おやつ
このパターンを繰り返すことで、「お座りという言葉=座ればおやつがもらえる」と学習していきます。
3. レベル2:憧れの「お手」の教え方
お座りができたら、次は「お手」に挑戦です。
猫の前足に触れることへの抵抗感をなくすトレーニングも兼ねているため、爪切りなどのケアもしやすくなるメリットがあります。
STEP 1:座った状態でおやつを握りこむ
猫にお座りをさせ、あなたの手の中におやつを握りこみます。
猫の鼻先にその手を持っていき、匂いを嗅がせます。
STEP 2:前足が出たらご褒美
猫は「手の中に美味しいものがある」とわかると、どうにかして取り出そうとします。
最初は鼻でクンクンしますが、そのうち前足(チョイチョイ手)を出してあなたの手に触れようとします。
この「前足があなたの手に触れた瞬間」に手を開き、おやつを食べさせてください。
「前足で触る=おやつが出てくる」というルールを教えます。
STEP 3:手のひらに乗せる形へ誘導
前足で触ることに慣れてきたら、今度は空っぽの手のひらを猫の前に差し出します。
(おやつは反対の手やポケットに隠しておきます)
猫が「あれ?おやつは?」と確認するために、差し出された手のひらに前足を乗せたり、触れたりしたら、すかさず「よし!」と言って隠しておいたおやつを与えます。
STEP 4:言葉をつける
手のひらを差し出すのと同時に「お手」と声をかけます。
何度も繰り返すうちに、「お手」の声と手のひらを見るだけで、前足を乗せてくれるようになります。
【ポイント】
猫がなかなか手を出さない場合は、軽く猫の肩や肘あたりを指でツンツン触ると、反射的に足を上げることがあります。その瞬間に手を差し込んで受け止めて褒める、という方法も有効です。
4. レベル3:可愛い「ハイタッチ」と「おかわり」
「お手」ができれば、応用技は簡単です。
手の位置や高さを変えるだけで、バリエーションが増やせます。
ハイタッチの教え方
「お手」の要領ですが、手のひらを出す位置を猫の顔の高さまで上げます。
最初は低い位置から始め、徐々に高くしていきましょう。
猫が手を伸ばしてあなたの手のひらに「パンッ」とタッチしたら、大げさに褒めておやつをあげます。
コマンドは「ハイタッチ」や「タッチ」がおすすめです。
おかわりの教え方
「お手」は利き手(出しやすい方の手)で行うことが多いです。
反対の手を出してもらうのが「おかわり」です。
「お手」をした後に、おやつをあげずに反対の手を差し出してみましょう。
猫が「こっちじゃないの?」と迷って、もう片方の足を少しでも動かしたり上げたりしたら、すぐに褒めておやつをあげます。
これを繰り返し、左右の手を使い分けるように誘導します。
5. さらに高度な「ターン(回れ)」や「ジャンプ」
おやつを使って猫の動きを誘導する方法(ルアーリング)を使えば、体全体を使った芸も可能です。
ターン(回れ)
- おやつを持った手を猫の鼻先に近づけます。
- その手を、猫の頭を中心に大きな円を描くようにゆっくり水平に回します。
- 猫が匂いにつられてクルッと一周回ったら、おやつをあげます。
- 慣れてきたら手の動きを小さくし、「ターン」や「回れ」と言葉を添えます。
輪っかジャンプ
- フラフープや腕で作った輪っかを、地面に置きます(最初は高さゼロ)。
- おやつを使って誘導し、猫に輪っかの中を通り抜けさせます。
- 通り抜けたらご褒美。
- 徐々に輪っかの位置を高くしていきます。無理のない高さでジャンプさせましょう。
6. うまくいかない時のQ&A
猫のトレーニングは根気が必要です。よくある悩みと対処法をまとめました。
Q. 全然興味を示してくれません。
A. おやつを変えるか、時間を変えてみましょう。
猫にとって「そのおやつを食べるためなら労働してもいい」と思える価値が必要です。いつものドライフードではなく、匂いの強いオヤツに変えてみてください。
また、お腹がいっぱいだと絶対にやりません。食事前の空腹時を狙ってください。
Q. 手を出すと噛み付いてきます。
A. おやつへの興奮が強すぎるかもしれません。
一度落ち着かせるために、トレーニングを中断しましょう。また、手におやつを握ったままだと「手を噛めばおやつが出る」と誤学習することがあります。
「手は合図を出すだけ」にして、おやつは反対の手からあげるか、床に置くようにしてみてください。
Q. 前足を触られるのを嫌がります。
A. 「鼻タッチ」から始めてみては?
猫は前足(手先)が敏感なため、触られるのを嫌う子がいます。その場合は「お手」にこだわらず、差し出した指先に鼻をくっつける「鼻タッチ(ターゲットタッチ)」など、猫が抵抗なくできる芸から始めて、褒められる楽しさを教えてあげましょう。
7. 「クリッカー」を使うとさらにスムーズに!
本格的に教えたい場合は、「クリッカー」という道具を使うのがおすすめです。
クリッカーとは、「カチッ」という音が鳴る小さな道具です。
「カチッ」という音がしたら必ずおやつがもらえる、ということを最初に教え込みます。
- 猫が良い動きをした瞬間に「カチッ」と鳴らす。
- その後におやつをあげる。
こうすることで、言葉で褒めるよりも正確なタイミング(0.1秒の瞬間)を猫に伝えることができます。「今、右手を上げたのが正解だよ!」と明確に伝わるため、猫の学習スピードが飛躍的に上がります。
クリッカーはペットショップやネットで数百円で購入できますし、ボールペンのノック音や、舌を鳴らす音などで代用することも可能です。
まとめ:できなくてもOK!過程を楽しもう
猫に芸を教える最大の目的は、「愛猫との楽しい時間を増やすこと」です。
犬のように忠実に従うことを求めてはいけません。
「今日はお座りしてくれた!天才!」
「今日はお手をする気分じゃないのね、また明日」
と、猫の気分に合わせて、ゲーム感覚で楽しむ心の余裕が大切です。
成功したらラッキー、くらいの気持ちで、毎日のコミュニケーションに取り入れてみてください。
もし芸をマスターできれば、SNSでの人気者になったり、来客時の一発芸として盛り上がること間違いなしですよ!

