猫の目は、神秘的で魅力的です。しかし、そんな美しい目も、様々なトラブルに見舞われることがあります。目が赤くなっている、目ヤニが多い、まぶしそうにしている、目が濁っているなど、愛猫の目の異変に気づいたら、心配になるのは当然のことでしょう。
猫の目のトラブルは、一時的なものから、視力低下や失明につながる深刻な病気まで多岐にわたります。早期に異変に気づき、適切な対応をすることが、愛猫の目の健康とQOL(生活の質)を守る上で非常に重要です。
この記事では、猫によく見られる目のトラブルについて、その症状、考えられる原因、家庭でできるケア、そして動物病院を受診すべき目安までを詳しく解説します。結膜炎のような比較的軽度なものから、緑内障や白内障といった重篤な病気まで、それぞれの特徴を理解し、愛猫の目の健康管理に役立ててください。
猫の目の構造とトラブルの兆候
猫の目のトラブルを理解するために、まずは目の基本的な構造と、注意すべき異変の兆候を知っておきましょう。
猫の目の基本的な構造
猫の目も人間と同様に、様々な部位から構成されています。
- 結膜: まぶたの裏側と眼球の白目を覆う粘膜。
- 角膜: 眼球の表面にある透明な膜。光を通し、目を保護する役割があります。
- 虹彩: 瞳孔の大きさを調節し、目に入る光の量をコントロールする部分。猫の目の色を決定します。
- 瞳孔: 虹彩の中央にある穴。明るさに応じて大きさが変わります。
- 水晶体: 瞳孔の奥にあるレンズ。光を網膜に集める役割があります。
- 網膜: 目に入った光を感知し、脳に伝える部分。
- 瞬膜(第三のまぶた): 目頭にある白い膜。普段は見えませんが、目を保護したり、涙を広げたりする役割があります。体調が悪い時や眠い時などに露出することがあります。
目のトラブルの一般的な兆候
以下のような症状が見られたら、目のトラブルのサインかもしれません。注意して観察しましょう。
- 目ヤニが多い、色が変わる: 透明なものから、白っぽい、黄色っぽい、緑っぽいなど。
- 涙が多い: 常に涙が溢れている、涙で目の周りが濡れている。
- 目をしょぼしょぼさせる、まぶしそうにする: 目を閉じたり、細めたりする。明るい場所を嫌がる。
- 目をこする、かゆがる: 前足で目を掻いたり、顔を床や物にこすりつけたりする。
- 目が赤い: 白目の部分が充血している。
- 目の濁り、白い膜: 目全体または瞳孔の奥が白く濁って見える。瞬膜が露出している。
- 目の腫れ: まぶたや目の周りが腫れている。
- 瞳孔の異常: 左右の瞳孔の大きさが違う、光に反応して大きさが変わらない。
- 視力の低下: 物にぶつかる、段差で躊躇する、おもちゃへの反応が鈍いなど。
猫の目のトラブル:症状と原因、対策
ここからは、猫によく見られる具体的な目のトラブルについて詳しく解説します。
1. 結膜炎(けつまくえん)
目のトラブルで最もよく見られるのが結膜炎です。結膜が炎症を起こした状態を指します。
- 症状: 目が赤い(充血)、目ヤニが多い(透明~膿状)、涙が多い、目をしょぼしょぼさせる、目をこする。瞬膜が露出することもあります。
- 原因:
- ウイルス感染: 猫ヘルペスウイルス(猫風邪の原因)、猫カリシウイルスなど。
- 細菌感染: クラミジアなど。
- アレルギー: 花粉やハウスダストなど。
- 異物: ほこり、砂、毛など。
- 外傷: ケンカや引っ掻き傷など。
- その他: ドライアイ、まぶたの異常など。
- 対策・ケア:
- 軽い症状の場合: 目の周りを清潔なコットンやガーゼで拭き、目ヤニを取り除いてあげましょう。ぬるま湯で湿らせると拭き取りやすいです。
- 病院を受診すべき目安: 目ヤニが膿状で量が多い、目が赤く腫れている、痛そうに目を閉じている、症状が改善しない、悪化する、呼吸器症状(くしゃみ、鼻水)を伴う場合は、早めに動物病院を受診してください。感染症が原因の場合は、点眼薬や内服薬での治療が必要です。
2. 角膜炎(かくまくえん)
角膜に炎症が起こる病気です。角膜は透明なため、炎症が起こると白く濁って見えることがあります。
- 症状: 目をしょぼしょぼさせる、まぶしそうにする、目をこする、涙が多い、目ヤニ、角膜の白い濁り、血管の新生(角膜に赤い血管が走る)。
- 原因:
- ウイルス感染: 特に猫ヘルペスウイルスが原因となることが多いです。
- 細菌感染: 傷から細菌が侵入することも。
- 外傷: 引っ掻き傷、異物の混入、シャンプーなど刺激物の接触。
- その他: ドライアイ、まぶたの異常など。
- 対策・ケア:
- 病院を受診すべき目安: 角膜炎は放置すると視力低下や失明につながることもあるため、上記の症状が見られたら速やかに動物病院を受診しましょう。原因に応じた点眼薬や内服薬が処方されます。
3. 緑内障(りょくないしょう)
眼圧(眼球内の圧力)が異常に上昇し、視神経を圧迫して視力低下や失明を引き起こす病気です。進行が早く、緊急性の高い病気の一つです。
- 症状: 目の痛み(目をしょぼしょぼさせる、頭を振る、元気がなくなる)、目の充血、瞳孔が開いたままになる、目の白い濁り、目が大きくなる(牛眼)。片目だけに起こることもあります。
- 原因:
- 原発性緑内障: 遺伝的な要因で、特定の猫種(シャム、バーミーズなど)に見られることがあります。
- 続発性緑内障: ぶどう膜炎、白内障、腫瘍、外傷などが原因で眼内の水分の排出が妨げられることで起こります。
- 対策・ケア:
- 緊急受診: 緑内障は進行が非常に早く、痛みも強いため、上記症状が見られたら一刻も早く動物病院を受診してください。早期発見・早期治療が視力温存の鍵となります。点眼薬や内服薬で眼圧を下げる治療が行われますが、場合によっては外科手術が必要になることもあります。
4. 白内障(はくないしょう)
目のレンズである水晶体が白く濁り、光が網膜に届きにくくなることで視力が低下する病気です。
- 症状: 瞳孔の奥が白く濁る、視力低下(物にぶつかる、段差を怖がる、おもちゃに反応しない)、暗い場所を嫌がる。
- 原因:
- 加齢: 老猫に最も多い原因です。
- 遺伝: 特定の猫種に遺伝的に発症しやすいことがあります。
- 外傷: 目への強い衝撃。
- 他の病気: ぶどう膜炎、糖尿病など。
- 対策・ケア:
- 病院受診: 白内障の症状が見られたら、動物病院を受診して診断を受けましょう。進行を遅らせるための点眼薬が処方されることもありますが、根本的な治療は外科手術(濁った水晶体を除去し、人工レンズを挿入)になります。
- 家庭でのケア: 視力が低下しても、慣れた環境であれば猫は順応します。家具の配置を変えない、危険な場所を設けないなど、愛猫が安全に生活できる環境を整えてあげましょう。
5. ぶどう膜炎(ぶどうまくえん)
目の虹彩、毛様体、脈絡膜からなる「ぶどう膜」という部分に炎症が起こる病気です。
- 症状: 目の痛み(しょぼしょぼさせる)、充血、瞳孔が小さくなる、目の濁り(前房フレア)、目ヤニ、視力低下。
- 原因:
- ウイルス感染: 猫エイズウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)、猫伝染性腹膜炎(FIP)など。
- 細菌感染、真菌感染、寄生虫感染:
- 免疫介在性疾患: 自己免疫疾患。
- 腫瘍: 目の内部の腫瘍。
- 外傷:
- その他: 原因不明の場合もあります。
- 対策・ケア:
- 緊急受診: ぶどう膜炎は緑内障や白内障など他の重篤な目の病気を引き起こす可能性があるため、早期の診断と治療が必要です。必ず動物病院を受診してください。原因となっている病気を特定し、それに応じた治療(ステロイド剤の点眼や内服など)が行われます。
6. その他の目のトラブル
- 逆さまつげ・異所性睫毛: まつげが眼球に当たり、刺激やかゆみ、角膜炎を引き起こすことがあります。
- チェリーアイ(第三眼瞼腺逸脱): 瞬膜の裏にある腺が飛び出して、赤い塊のように見える状態です。
- ドライアイ: 涙の量が不足し、目が乾燥して傷つきやすくなる状態です。
これらの症状が見られた場合も、自己判断せずに動物病院で診てもらうようにしましょう。
愛猫の目を守るための日常ケアと予防
日頃からのケアと注意が、目のトラブルの早期発見と予防につながります。
定期的な目のチェック
毎日、愛猫との触れ合いの中で、目の様子をよく観察しましょう。
- 目の周りに目ヤニがついていないか
- 目が赤くなったり、腫れたりしていないか
- 涙が多く出ていないか
- 瞳孔の大きさに左右差がないか
- 目をしょぼしょぼさせていないか
特に、ブラッシングの際などに目元を注意深く見る習慣をつけましょう。
目の周りの清潔を保つ
目ヤニや汚れは、こまめに優しく拭き取ってあげましょう。清潔なコットンやガーゼをぬるま湯で湿らせて、目頭から目尻に向かって拭き取ります。力を入れすぎないように注意してください。人間用のウェットティッシュや目薬は絶対に使用しないでください。
感染症予防とワクチン接種
猫風邪の原因となるヘルペスウイルスやカリシウイルス、クラミジアなどは、目のトラブルの大きな原因となります。これらの感染症を予防するためにも、定期的なワクチン接種は非常に重要です。
快適な生活環境を整える
- 部屋の清潔維持: ホコリやハウスダストは目の刺激になることがあります。こまめな掃除を心がけましょう。
- 適切な湿度: 空気が乾燥しすぎるとドライアイの原因になることがあります。特に冬場は加湿器などで適切な湿度を保ちましょう。
- 刺激物の排除: タバコの煙や強い香りの芳香剤などは、猫の目に刺激を与える可能性があります。
ストレスを軽減する
猫はストレスに敏感な動物です。ストレスは免疫力の低下につながり、目の病気を悪化させたり、再発させたりする原因になることがあります。安心できる環境を提供し、適度な遊びでストレスを発散させてあげましょう。
まとめ:異変に気づいたら早めに動物病院へ
猫の目のトラブルは多岐にわたり、中には視力や命に関わる重篤な病気も潜んでいます。愛猫の目の異変に気づいたら、「様子を見よう」と自己判断せずに、早めに動物病院を受診することが何よりも大切です。
獣医師は、専門的な知識と検査によって正確な診断を下し、愛猫に最適な治療法を提案してくれます。日頃から愛猫の目をよく観察し、少しでも気になることがあれば迷わず専門家の助けを借りましょう。
私たち飼い主ができることは、早期発見に努め、愛猫の目の健康を常に気にかけてあげることです。適切なケアと獣医師との連携で、愛猫がいつまでも美しい目で世界を見つめられるようにサポートしてあげてください。

