猫のしつけは「褒める」が正解!信頼関係を深めるポジティブトレーニングのやり方

猫のしつけ 猫の行動と心理

「猫は自由気ままで、犬のようにしつけなんてできない」
そう思っていませんか?

確かに、猫に「お手」や「伏せ」を完璧に教えるのは難しいかもしれません。しかし、トイレの場所を覚えたり、家具での爪とぎを止めさせたり、キャリーバッグに大人しく入ってもらったりすることは、正しい手順を踏めば十分に可能です。

その鍵となるのが、「ポジティブトレーニング(褒めて伸ばすしつけ)」です。
大声で叱ったり罰を与えたりするのではなく、「良いことをするといいことがある」と学習させるこの方法は、猫のストレスにならず、飼い主さんとの絆をより深めることができます。

この記事では、今日から実践できる「猫を褒めて伸ばすトレーニング」の基本と、具体的なシーン別の対処法を解説します。

1. なぜ猫に「叱る」しつけはNGなのか?

具体的な方法に入る前に、なぜ従来の「悪いことをしたら叱る」という方法が猫に通用しないのか、その理由を知っておきましょう。

猫は「反省」しない?

例えば、猫がテーブルの上の物を落とした後に、あなたが大声で「ダメ!」と怒鳴ったとします。
この時、猫は「物を落としたから怒られた」とは考えません。「この人が急に大きな声を出して怖い」「この場所にいると嫌なことが起きる」と認識します。

つまり、「行動」と「罰」が結びつかず、「飼い主」と「恐怖」が結びついてしまうのです。これでは問題行動が直らないどころか、飼い主さんを避けるようになったり、ストレスで別の問題行動を起こしたりする原因になります。

「ポジティブトレーニング」の仕組み

一方で、ポジティブトレーニングは「オペラント条件づけ」という学習心理学に基づいています。難しく聞こえますが、原理はシンプルです。

  • 行動の直後に「良いこと(ご褒美)」がある → その行動を繰り返すようになる(強化)
  • 行動の直後に「何も起きない(無視)」 → その行動をしなくなる(消去)

猫にとってのメリット(おやつ、遊び、撫でられる)を効果的に使うことで、自発的に「良い行動」を選択するように導くのが、このトレーニングの目的です。

2. 成功率を上げる「褒め方」の3大ルール

ただ漫然とおやつをあげるだけでは、しつけにはなりません。猫に「何が正解だったのか」を伝えるためには、3つのルールがあります。

① タイミングは「直後(1〜2秒以内)」

これが最も重要で、最も難しいポイントです。
猫が望ましい行動をした「その瞬間」に褒めてご褒美をあげる必要があります。5分後に褒めても、猫は「なぜ褒められたのか(おやつをもらえたのか)」を理解できません。
常にポケットにおやつを忍ばせておくか、すぐに取り出せる場所に用意しておきましょう。

② 猫にとっての「最高のご褒美」を用意する

しつけを成功させるには、猫のやる気を引き出す強力な動機づけが必要です。

  • 大好きなおやつ(ペースト状のものや、フリーズドライなど)
  • 大好きな遊び(猫じゃらし)
  • 気持ちいい場所を撫でる

食いしん坊な猫ちゃんならおやつが一番効果的ですが、食に興味がない子の場合は、遊びや撫でることをご褒美にしましょう。

③ 短時間で切り上げる

猫の集中力は長く続きません。トレーニングは1回あたり数分〜5分程度で十分です。
猫が飽きる前に、「楽しかった!」という印象で終わらせることが、次回への意欲につながります。

3. 【実践編】シーン別・ポジティブトレーニングの方法

それでは、具体的な悩みごとのトレーニング方法を見ていきましょう。

爪とぎの場所を教える場合

壁やソファで爪とぎをしてしまう場合、「そこでやらないで!」と叱るよりも、「ここでやってね」と正しい場所を教える方が効果的です。

  1. 猫が好む素材(ダンボール、麻、木など)や形状(縦置き、横置き)の爪とぎを用意し、ソファの近くなど目立つ場所に置きます。
  2. 猫がその爪とぎを使った瞬間に、すかさず「いい子!」と声をかけ、おやつをあげます。
  3. これを繰り返すことで、「ここで爪を研ぐと良いことがある」と学習します。

※ソファで研ごうとした時は、無言で抱き上げて正しい爪とぎの場所へ移動させます。ソファには爪とぎ防止シートを貼るなどして、「研ぎ心地を悪くする」のも有効です。

ブラッシングや爪切りを好きになってもらう場合

嫌がる猫が多いケアですが、少しずつ慣らすことで「我慢すればご褒美がもらえる」と覚えてくれます。

  1. ブラシや爪切りを見せるだけ → おやつをあげる
  2. 体に一瞬当てるだけ → おやつをあげる
  3. ひと撫で(爪一本)だけ → おやつをあげる

このように、スモールステップで進めるのがコツです。嫌がったらすぐに中止し、無理強いは絶対にしないようにしましょう。

噛み癖を直したい場合(遊んでいる最中)

遊んでいる最中に興奮して手足を噛んでくる場合、叩いたり騒いだりすると「遊んでもらっている」「反応が返ってきた」と勘違いしてエスカレートすることがあります。

【対処法:徹底的な無視(ネガティブパニッシュメント)】

  • 噛まれた瞬間に「痛い!」と低く短く言い、遊びを中断してその場を立ち去ります(別室に行くなど)。
  • 1〜2分して猫が落ち着いたら、戻ってきて遊びを再開します。
  • 優しく遊べている間は、たくさん褒めてあげましょう。

「噛むと楽しい時間が終わってしまう」「優しく遊ぶと楽しいことが続く」と学習させます。

キャリーバッグに慣れさせる場合

動物病院に行く時だけキャリーを出すと、「キャリー=怖い場所に行く」と学習して逃げるようになります。
普段から部屋の中にキャリーを開けた状態で置いておき、中にふかふかのタオルと「とっておきのおやつ」を入れておきましょう。
「キャリーの中は安全で美味しいものがある場所」という認識に変えていくことで、いざという時のストレスを軽減できます。

4. うまくいかない時のチェックリスト

「褒めているのになかなか覚えてくれない」という場合は、以下の点を見直してみてください。

一貫性はありますか?

家族によって対応が違うと猫は混乱します。
「お父さんはテーブルに乗っても許してくれるけど、お母さんはダメと言う」といった状況では、猫は何が正解かわかりません。家族全員でルールを統一しましょう。

ご褒美の価値は十分ですか?

いつも食べているドライフードでは、頑張る気にならないかもしれません。
トレーニングの時だけもらえる「スペシャルなおやつ」を用意すると、目の色が変ります。

猫の体調や気分を無視していませんか?

眠い時や、食後でお腹いっぱいの時、トイレに行きたい時などにトレーニングをしても効果はありません。
猫が活動的になっている時間帯(空腹時や遊びたい時)を狙いましょう。

5. まとめ:しつけは「我慢比べ」ではなく「コミュニケーション」

猫のポジティブトレーニングは、今日やって明日すぐに完璧になるものではありません。
猫の性格や年齢によっては、数ヶ月かかることもあります。しかし、根気よく続けることで必ず変化は現れます。

大切なのは、「猫をコントロールしようとする」のではなく、「猫にメリットを提示して選んでもらう」という姿勢です。

「あ、これをするとママ(パパ)が喜んでくれるし、おやつも貰える!」
愛猫がそう気づいてくれた時、二人の信頼関係はより強固なものになっているはずです。失敗しても叱らず、おおらかな気持ちで、愛猫との「学びの時間」を楽しんでくださいね。